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フィリピン有形・無形文化遺産の先端デジタル技術従事者人材育成

1 : 事業概要と目的

(1)  事業立案の背景、問題意識
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近年、アジア諸国において文化遺産国際協力が活発な動きを始めている。 フィリピンでは、有形・無形文化遺産の保護や文化生産労働者の職業能力開発等を目的に文化遺産法が2009年に施行された。 その中で、文化財の保存に加え、国際的な文化交流や観光分野における活用の効果が認識され、デジタル文化財への関心が高まっている。 そのため、文化財の保存及び活用の必要性は増し、文化財関連施設が設立されているが同分野の技術とそれを担う人材の育成は未だ不十分で、現場の実情に即した学術的基盤の形成と実務的技術の普及は喫緊の課題である。 このような中、文化財デジタル化に関する日本発の最先端技術を最大限に活用した本事業は、科学技術と文化の融合による協力事業として、日比関係の協力、友好関係の拡大・強化に大きく貢献できる取り組みである。

(2)  ユネスコ活動のこれまでの実績
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京都大学工学研究科は、ユネスコが推進する世界遺産活動の実績として、開発した文化財専用先端イメージング技術を用いた文化財の保存及び活用に貢献する研究活動を世界各地で積極的に実施している。 これまで、ユネスコ世界文化遺産の仁和寺、二条城をはじめとする国内外の国宝級文化財を対象にプロジェクトを立ち上げてきた。 後世に残すべき人類共通の貴重な財産である文化財を詳細に記録・保存し、その活用として文化財コンテンツを製作する等、研究成果を積極的に公開・展示する取り組みを行っている。 また、中国、エジプト、韓国、イギリスの教育研究機関や博物館と共同で開設した海外研究拠点を中心に、継続的視野に立った文化遺産国際協力を推進している。 さらに、本事業の研究代表者が同じく研究代表を務める平成23年度文部科学省政府開発援助ユネスコ活動費補助金「アジア文化遺産記録・活用を目的としたデジタル化技術従事者人材育成」では、文化財のデジタル化及び活用技術に関する人材育成プログラムを中国で実施し、ユネスコ活動の進展と交流の促進に寄与している。

(3)  期待される効果
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科学技術と文化の融合による有形・無形文化遺産の保存及び活用技術に貢献する研究交流と人材育成を実施する本事業は、文化を通じての国際的相互理解を促進し日比関係の協力、友好関係の拡大・強化につながる非常に重要な取り組みである。 また、継続的な共同研究や教育活動を実施するために形成する予定の共同研究拠点は、フィリピンのみならず周辺諸国に対しても、学術的貢献、文化・社会的、経済的影響等、多方面にその効果を発揮することができる。 さらに、日本及びフィリピンの博物館・美術館や観光施設等と連携した研究成果の展示・公開活動は、世界の文化多様性保護に対する日本とフィリピンの国民の理解と関心・意識の向上に貢献する取り組みとして、ユネスコ活動の振興に寄与することが期待される。

(4)  研究目的
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本事業は、京都大学工学研究科が開発した世界最高水準の文化財イメージング技術を最大限に活用し、科学技術と文化の融合による有形・無形文化遺産の保存及び活用に貢献する研究交流と人材育成を実施することを目的とする。 また、継続的な共同研究や教育活動を実施するために、フィリピン国立大学内に共同研究拠点を設置し、実効性のある学術的基盤の形成と実務的技術の普及を推進する。

(5)  事業項目
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① 共同研究拠点の形成

  本事業の共同研究拠点を形成し、共同研究や教育活動を実施する

② 教育プログラムの実施

  文化財のデジタル化と活用に関する教育プログラムを実施する

③ 研究集会の開催(開催地:フィリピン)

  本事業の課題と展望、技術・研究交流を目的とした研究集会(本事業関係者を対象)を開催する

④ 研究成果の公開・展示(開催地:フィリピン・日本)

  国際会議等を開催し、研究者のみならず幅広い人々を対象にした研究成果の展示・公開を実施する

2 : 事業計画

(1) 共同研究拠点の形成
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本事業の共同研究拠点をフィリピン国立大学内に設立する。京都大学先端イメージング工学研究室で開発したイメージング機器一式を共同研究拠点に設置し、文化財の高精細デジタル化に関する共同研究や教育活動を実施する。

   共同研究を通した実地研修プロセス


(2) 教育プログラムの実施
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文化財のデジタル化や活用分野の研究者や実務者を対象として高精細デジタル化技術に関わる先端の知識・技術・手法等に関する講義や実習を行う。 本教育プログラムは、フィリピン国立大学で設立する共同研究拠点において継続的に実施される。 また、ここで使用するカリキュラムと教材は、平成23年度文部科学省政府開発援助ユネスコ活動費補助金「アジア文化遺産記録・活用を目的としたデジタル化技術従事者人材育成」において京都大学工学研究科が開発したものを改良・改善し、現地のニーズに即して制作する。

 2-1 ) 対象者

┣ 博物館・美術館の学芸員や研究員等
┣ 文化財を活用したメディア・アート関係従事者
┣ 観光分野等においてデジタル文化財を活用したコンテンツ制作実務者
┣ 文化財の保存(保存科学)分野の研究者・実務者
┣ 研究分野で高精細デジタル画像を活用する研究者 等

 2-2 ) 目標

【技術者/実務者】
高度な専門知識ではなく、現場で使える技術の習得をめざす。 具体的には、大きく分けて一般ソフトウェアと、色彩・画像関連ソフトウェアである。 本プログラムを通して、高等学校レベルの知識から色彩・画像関連ソフトウェア(例えばPhotoshop、Illustrator、画像処理ソフトウェア)の知識を習得し、さらにそれらの知識を自由自在に使える技術者を養成する。
【研究者】
高度な研究レベルにおいて高精細デジタル画像を用いた分析法や活用方法に関する基礎的な知識・技術の習得をめざす。 具体的には、分析的イメージング、顔料・材料分析(保存科学)、人文社会学における絵図・古文書の活用などである。 ここで基礎知識・技術を習得した研究者は、各分野においてそれぞれがさらに高度な知識・技術の習得をめざすための基礎知識・技術を提供する。

 2-3 ) 構成要素・内容

┣ デジタル画像の画質評価とカラーサイエンス・画像処理の基礎と実践
┣ 大型非接触超高精細画像取得装置を用いた画像取得とカラーマネージメント
┣ 高精細デジタル画像を用いたデジタル修復の実習
┣ マルチメディア型文化財コンテンツ作成
┣ 文化財の公開と活用
┣ 先端イメージング技術の応用:文化財以外の社会他分野への応用


(3)  研究集会の開催
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教育研究機関、博物館、観光機関等の研究者・実務者等が参加した研究協力体制を構築し、本事業の取り組むべき課題と展望、技術・研究交流を目的とした研究集会を開催する。


(4)  研究成果の公開・展示
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日本及びフィリピンの博物館・美術館や観光施設等と連携して、研究者のみならず幅広い人々を対象にした研究成果の展示・公開を実施する。


(5)  事業の実施スケジュール
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前述の事業計画に基づき、事業を遂行した。以下に、事業の実施スケジュールを示す。

事業実施スケジュール


(6) 会議記録
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  6-1 ) フィリピン国立大学打合せ

  日時: 2012年5月30日(水)
  場所: フィリピン国立大学
  参加者:フィリピン国立大学 Saloma総長、Soriano教授
      京都大学 井手教授
  内容:
     ①本事業の概要説明
     ②共同研究施設設立を含めた現状報告と今後の具体的な共同研究に向けた検討と
      継続的な協力体制の構築に向けた支援の依頼
     ③本年度フィリピンで開催する国際会議への協力
     フィリピン大学Saloma総長と京都大学井手教授   フィリピン大学Saloma総長と京都大学井手教授


  6-2 ) University of Santo Tomas (UST) 打ち合わせ

  日時: 2012年7月26日(木)
  場所: University of Santo Tomas
  参加者:UST : Abano UST Museum 所長、Sison研究科長、Bautista准教授
      京都大学 井手教授
  内容:
     ①本事業の概要説明
     ②今後の具体的な共同研究に向けた検討と継続的な協力体制の構築に向けた支援の依頼
      →UST Museumと共同研究を実施することで合意
     ③本年度フィリピンで開催する国際会議への協力:会場提供
     Bautista准教授、井手教授、Abano所長   井手教授、Bautista准教授、Sison研究科長


  6-3 ) National Historical Commission of the Philippine(NHCP) 打ち合わせ

  日時: 2012年7月27日(金)
  場所: National Historical Commission of the Philippine(NHCP)
  参加者:NHCP Diokno所長、UP Soriano教授
      京都大学 井手教授
  内容:
     ①本事業の概要説明
     ②今後の具体的な共同研究に向けた検討と継続的な協力体制の構築に向けた支援の依頼
      →NHCPと共同研究を実施することで合意
     ③本年度フィリピンで開催する国際会議への協力
     oriano教授(UP)、Diokno所長(NHCP)、井手教授   oriano教授(UP)、Diokno所長(NHCP)、井手教授


  6-4 ) フィリピン国立博物館 打ち合わせ

  日時: 2012年7月28日(土)
  場所: フィリピン国立博物館
  参加者:フィリピン国立博物館 Barns所長、Labrador副所長、UP Soriano教授
      京都大学 井手教授
  内容:
     ①本事業の概要説明
     ②今後の具体的な共同研究に向けた検討と継続的な協力体制の構築に向けた支援の依頼
      →フィリピン国立博物館と共同研究を実施することで合意
     ③本年度フィリピンで開催する国際会議への協力
     Barns所長、Labrador副所長、井手教授   Barns所長、Labrador副所長、井手教授


  6-5 ) フィリピン国立博物館 打ち合わせ/新館の視察

  日時: 2012年8月30日(木)
  場所: フィリピン国立博物館
  参加者:フィリピン国立博物館 Labrador副所長、UST Bautista准教授
      京都大学 星合研究員
  内容:
     ①USTで開催する学会、教育プログラムの概要説明
     ②共同研究実施に向けた具体的な検討
     ③新館の視察
     Bautista准教授、Labrador副所長、星合研究員   Bautista准教授、Labrador副所長、星合研究員
     フィリピン国立博物館新館視察   フィリピン国立博物館新館視察


  6-6 ) フィリピン観光省 訪問

  日時: 2012年9月4日(火)
  場所: フィリピン観光省 INTRSMUROS ADMINISTRATION
  参加者:フィリピン観光省INTRSMUROS ADMINISTRATION Capistrano局長
      総本山仁和寺 大西執行、City University of Hong Kong Dr.Kenderdine
      京都大学 井手教授、星合研究員
  内容:
     ①本事業の概要説明
     ②今後の具体的な共同研究に向けた検討と継続的な協力体制の構築に向けた支援の依頼
     大西執行(仁和寺)、Capistrano局長(フィリピン観光省)、井手教授   大西執行(仁和寺)、Capistrano局長(フィリピン観光省)、井手教授


  6-7 ) UNESCO National Commission of the Philippines訪問

  日時: 22012年9月7日(金)
  場所: UNESCO National Commission of the Philippines (UNCP)
  参加者:UNCP Miralao事務局長、Domingo 役員
      総本山仁和寺 大西執行、City University of Hong Kong Dr.Kenderdine
      京都大学 井手教授、星合研究員
  内容:
     ①本事業の概要説明
     ②今後の具体的な共同研究に向けた検討と継続的な協力体制の構築に向けた支援の依頼
      →UNESCO National Commission of the PhilippinesおよびNational Museum of the Philippines 
      と連携して、本年度中にフィリピンの文化遺産を対象とした具体的な高精細デジタル化プロジェクト
      を実施することで合意
     ③本年度フィリピンで開催する国際会議への協力
      →フィリピン国内の別の地域(バギオを予定)での開催を検討
     Miralao事務局長、井手教授、Domingo役員、星合研究員   Miralao事務局長、井手教授、Domingo役員、星合研究員
                 Miralao事務局長、井手教授


 3 : 研究成果

 3-1 : 共同研究拠点の形成

(1)  概要とこれまでの背景
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本事業の拠点機関となるフィリピン国立大学物理学研究所は、イメージング技術において優れた技術研究・開発の実績を有し、 それらの技術を海洋科学や文化財保存に活用するプロジェクトを数多く実施している。 また、フィリピン国立博物館をはじめとする文化遺産関連組織との幅広いネットワークと強い求心力を有するため、 本事業の共同研究拠点を設立することにより、このネットワークを有機的に結合できる。
京都大学大学院工学研究科先端イメージング工学研究室とフィリピン国立大学物理学研究所は、 これまで文化財の高精細デジタル化技術に関する相互訪問による研究交流や共同研究に関する検討を重ねてきた。 また文化財のデジタル化プロジェクトの実施に向けて、対象となるフィリピン国内の文化財の事前調査を共同で行っている。 さらに、先端イメージング及びデジタル技術を用いた文化財の保存と活用に関する共同研究協定締結に合意し(2012年1月)、 研究者交流を含めた今後の更なる研究推進に向け、研究基盤を構築している。


(2)  共同研究拠点形成
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2012年3月に京都大学先端イメージング工学研究室で開発したイメージング機器を用いてフィリピン国立大学The Vargas Museum所蔵文化財を撮像し、同大学関係者と技術交流会を実施した。 そこで、文化財の高精細デジタル化を含めた多分野におけるイメージング技術の応用に関する研究や教育活動を共同で実施するため、本事業の共同研究拠点をフィリピン国立大学内に設立することで合意した。 同年5月、京都大学先端イメージング工学研究室で開発したイメージング機器一式を共同研究拠点に設置し、文化財の高精細デジタル化に関する共同研究や教育活動を実施している。

フィリピン国立大学内の共同研究拠点   フィリピン国立大学内の共同研究拠点


(3)  人材育成:講習とトレーニング(実地研修)
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フィリピン国立大学内に設置した共同研究室を拠点に、現地への技術移転を目的とした人材育成プログラムを実施した。
内容:
  ┣ イメージング機器一式の組立・設置・調整
  ┣ イメージング機器の使い方:撮影手順と方法
  ┣ ソフトウェアの使い方

   フィリピン国立大学で実施されたトレーニング   フィリピン国立大学で実施されたトレーニング


(4)  共同研究の実施
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4-1)  University of Santo Tomas Museumでの共同研究

2012年8月27日から31日にかけて、創立400年を迎えたアジア最古の大学として知られるUniversity of Santo Tomas博物館にて、同館所蔵文化財251点の高精細デジタル化を実施した。 共同調査を通して研究対象となる文化財の検討・選定を行い、UST Museumの研究員を中心としたデジタル化チームを結成し、実践プロセスを通した人材育成を並行して行った。 報告書は添付資料に示す。
フィリピン国立大学内の共同研究拠点   フィリピン国立大学内の共同研究拠点
フィリピン国立大学内の共同研究拠点   フィリピン国立大学内の共同研究拠点
フィリピン国立大学内の共同研究拠点   フィリピン国立大学内の共同研究拠点


4-2)  National Historical Commission of the Philippines (NHCP)での共同研究

2012年9月5日から6日にかけて、National Historical Commission of the Philippines (NHCP)にて、フィリピンの英雄であるホセ・リサールの衣装をはじめとする同会所蔵文化財14点の高精細デジタル化を実施した。
 National Historical Commission of the Philippines で実施された共同研究の様子    National Historical Commission of the Philippines で実施された共同研究の様子
 National Historical Commission of the Philippines で実施された共同研究の様子    National Historical Commission of the Philippines で実施された共同研究の様子


4-3)  フィリピン国立博物館での共同研究 Ⅰ

2012年11月30日から12月5日にかけてフィリピン大学に設立した共同研究室メンバーを中心に、フィリピン国立博物館所蔵・Hernando R. Ocampo 作絵画12点の高精細デジタル化を実施した。
  GSIS Gallery of the National Museum で実施された撮像の様子
 GSIS Gallery of the National Museum で実施された撮像の様子    GSIS Gallery of the National Museum で実施された撮像の様子


4-4)  フィリピン国立博物館での共同研究 Ⅱ

2012年12月27日から28日にかけてフィリピン大学に設立した共同研究室メンバーを中心に、フィリピン国立博物館所蔵・Juan Luna 作絵画42点の高精細デジタル化を実施した。
            “'Maria de la Paz' by Juan Luna (Oil on canvas) 解像度521dpiで撮影


4-5)  フィリピン国立博物館での共同研究 Ⅲ

2013年2月12日から15日にかけてフィリピン大学に設立した共同研究室メンバーを中心に、フィリピン国立博物館所蔵文化財73点の高精細デジタル化を実施した。
• 26 Architectural and Structural Plans drawn on linen by Antonio Toledo of the Department of Agriculture and Commerce Building
• 7 Algae specimen collected on 26 Feb 2012
• 7 Plant specimen (2 samples of Calamus usitatus Blanco, 1 Ctenopteris micropora Copel, 1 Ctenopteris venulosa (Bl.) Kunze, 1 Greeniopsis euphlebia Merr., 1 Greeniopsis multiflora (Elm.) Merr.,1 Rumohra carvifolia (Kunze) Ching )
• 3 Cloths (2 Banton Cloths, 1 Tausog cloth)
• 3 Fossils (rhinoceros molars, 2 ammonites)
• 5 Species of insects (3 beetles, 2 butterflies)
• 4 Archaeological finds with etched script (Butuan seal, Butuan Palaeograph, 2 Ticao Stones)
• 17 Paintings (14 paintings of the Basi Revolt, 1 Joya, 1 attributed to Andres Luna, 1 painting of San Vicente Ferrer on wood, unknown artist)
• 1 wooden Christ sculpture



 3-2 : 教育プログラムの実施

(1) 教育プログラム用教材制作
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文化財のデジタル化や活用分野の研究者や実務者を対象として高精細デジタル化技術に関わる先端の知識・技術・手法等に関する講義や実習を行う。 ここで使用するカリキュラムと教材は、京都大学工学研究科で実施している文・工融合型の文化財教育プログラムを基盤として、蓄積した知識、技術、事例、方法論等をとりまとめ、文化財のデジタル化と活用に関する教育プログラムで使用する教材を制作した。 平成23年度文部科学省政府開発援助ユネスコ活動費補助金「アジア文化遺産記録・活用を目的としたデジタル化技術従事者人材育成」において、京都大学工学研究科が開発したものも活用した。教材資料は、添付資料に示す。 なお、対象国がフィリピンであるため、英語にて制作を行った。


■ 目次

○Advanced Analytical Imaging Techniques for Material Investigation
○Analytical Imaging Devices for Digital Archiving of Cultural Heritage
○Image-based Analysis of Pigments on Cultural Heritage Painting through Multispectral Scanning
○Digitization of Cultural Heritage with Shiny Surface using Polarized Scanning Method
○A Model for the Development of Analytical Information Database: A Case Study on Japanese Pigment and Dyes
○Digitization of Cultural Heritage with Shiny Surface using Polarized Scanning Method
○Color Reproduction of RGB Cameras and Scanners
○Spectral Estimation and Image Super Resolution
○Digital Image Processing


(2) 教育プログラム
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平成24年9月4日〜7日の4日間、University of Santo TomasおよびNational Historical Commission of the Philippine において、 文化財の記録・活用分野の研究者や実務者を対象として、文化財の高精細デジタル化技術や、 文化財デジタルコンテンツ制作に関わる先端の知識・技術・手法等に関する講義や実習を実施した。
教育プログラムの様子   教育プログラムの様子
教育プログラムの様子   教育プログラムの様子
教育プログラムの様子   教育プログラムの様子


2-1)  参加者

フィリピン国内の文化財に関する研究者・実務者を対象として参加者を募り、17団体から計59名が、教育プログラムに参加した。参加者の所属先一覧は、下図に示す。
参加者募集については、フィリピン国立大学およびUniversity of Santo Tomasの協力を得ている。

参加者所属先一覧

             参加者集合写真


2-2)  プログラムスケジュール

会場:      University of Santo Tomas(España Boulevard. 1015, Manila)他
9月3日(月): 国際会議(後章4-3に示す)
9月4日(火): 教育プログラム(ワークショップ/チュートリアル・スキャニング・ デモンストレーション)
9月5日(水): 教育プログラム(ワークショップ/チュートリアル)
9月6日(木): 教育プログラム(ワークショップ/チュートリアル・スキャニング・デモンストレーション)
9月7日(金): 教育プログラム(ワークショップ/チュートリアル)

プログラム内容



2-3)  修了式

教育プログラムの修了式をUniversity of Santo Tomas Museumで開催し、修了証書を受講者へ授与した。
修了式の様子   修了式の様子
修了式の様子   修了式の様子
修了式の様子   修了式の様子



 3-3 : 国際研究集会の開催(フィリピン・日本)

3-3-1 ワークショップの開催(フィリピン)
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(1)  概要

平成24年5月31日にフィリピン国立大学(ケソンキャンパス)にて、ワークショップ「Digital Archiving of Heritage Objects: New Developments and Perspective」を開催した。 本ワークショップは、京都大学工学研究科とフィリピン国立大学の共催のもと開催された。 京都大学井手教授の講演後にオープンフォーラムの機会を設け、フィリピンにおける文化財の保護・保存・活用に関わる研究者や実務者50名と有意義な意見交換を行うことができた。 また、京都大学工学研究科で開発されたイメージング機器のスキャニングデモンストレーションを実施した。本ワークショップの報告書は添付資料に示す。   

    

(2)  プログラム


09:00-9:30 Registration
9:30-10:00 Opening remarks and introduction
(Dr. Maricor Soriano, Dr. Patrick Flores)
10:00-10:30 Ultra High Resolution Recording and Preservation of World Class Cultural Heritage
(Prof. Ari Ide-Ektessabi)
10:30-12:00 Open Forum on Academic Collaboration in Recording of, and Research on, Cultural Heritage
12:00-13:00 Lunch
13:00-13:15 Transfer to Vargas Museum Conservation Research Lab
13:15-14:15 Demonstration of Niji-S
14:15-15:15 Continuation of Open Forum
15:15-15:30 Coffee Break
15:30-16:30 Closing Program


        Prof. Soriano   井手教授
           オープンフォーラムの様子
        スキャニングデモンストレーションの様子   スキャニングデモンストレーションの様子
        スキャニングデモンストレーションの様子   スキャニングデモンストレーションの様子
        修了式の様子   修了式の様子
     修了証書


3-3-2 国際会議の開催(フィリピン)
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(1)  概要

    国際会議案内用ポスター

平成24年9月3日にフィリピン(マニラ市)にて、国際会議「START2012 Science and Technology for Art: Conserving and Recording Tangible, Intangible, and Natural Heritage」を開催した。 本会議は、京都大学工学研究科とUniversity of Santo Tomasの共催のもと、University of the Philippines, National Museum, National Historical Commission of the Philippines, UNESCO National Commission of the Philippinesの後援を得て開催された。各分野の9名の専門家により、有形・無形文化遺産および自然遺産の保護・保存・活用に関わる研究や文化財の知的財産権をテーマとして、 講演・パネルディスカッションを行った。当日は、フィリピン各地より130名を超える参加を得ることができた。   

    

    国際会議の様子(フィリピン)   国際会議の様子(フィリピン)
    国際会議の様子(フィリピン)   国際会議の様子(フィリピン)
    国際会議の様子(フィリピン)   国際会議の様子(フィリピン)


(2)  プログラム

    国際会議プログラム
    国際会議プログラム


Open Forum on Academic Collaboration in Recording of, and Research on, Cultural Heritage


講演後、参加者全員によるパネルディスカッションを行い、活発な意見交換が展開された。

    講演後ディスカッション様子   講演後ディスカッション様子
    講演後ディスカッション様子   講演後ディスカッション様子
    講演後ディスカッション様子   講演後ディスカッション様子
    講演後ディスカッション様子   講演後ディスカッション様子



3-3-3 研究集会の開催(日本)
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平成24年12月21日にUNESCO世界遺産である総本山仁和寺にて研究集会を開催した。 「最先端科学技術を用いた有形・無形文化遺産の保護と活用」をテーマに、ユネスコが推進する世界遺産活動に取り組んでいる研究者や実務者の技術・研究交流の促進を目的に、より広い連携と協働体制の構築を目指した。 また当日は4Kディスプレイを使用した文化財画像の展示を行った。   
国際会議プログラム


  研究集会の様子   研究集会の様子
  研究集会の様子   研究集会の様子
  研究集会の様子   研究集会の様子
  研究集会の様子   研究集会の様子



 3-4 : 国際共同研究の継続(中国)

(1) 中国での継続活動
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平成23年度政府開発援助ユネスコ活動費補助金「アジア文化遺産記録・活用を目的としたデジタル化技術従事者人材育成」において、中国との国際的な科学技術コミュニティを構築し、 文化財の保存・活用のための国際研究基盤を構築することを目的とし、教育プログラムに併せて、故宮博物院にてスキャナのデモンストレーション及びコンテンツ制作に関する研究会を開催した。 文化財に関わる研究者・実務者を対象として、実践を交えた講習と活発な意見交換により、文化財のデジタル技術に関する理解を深め、さらに今後の共同研究に有用な交流が展開できた。 本研究で構築したネットワークを基盤に中国での研究活動を継続し、平成24年度に故宮博物院において具体的な国際共同研究を実施することができた。


(2) 国際共同研究の実施 故宮博物院
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2012年7月31日から 8月3日にかけて故宮博物院所蔵文化財8点の高精細デジタル化を共同で実施した。撮影した文化財の概要および一部の画像を下記に示す。

故宮博物院での撮影の様子   故宮博物院での撮影の様子

撮影した文化財の概要

撮影した文化財(一部)の画像

撮影した文化財(一部)の画像

撮影した文化財(一部)の画像

撮影した文化財(一部)の画像

撮影した文化財(一部)の画像





京都大学工学研究科 機械理工学専攻 先端イメージング工学 井手研究室